「孫育て」という言葉をご存知でしょうか。
親の代わりに祖父母が孫の世話をすることですが、主に共働き世帯や一人親世帯の補助を祖父母が行う行為を指す言葉として最近では使われているようです。
実母は既に他界し実父は老老介護状態で、また義理両親は「口は出すが手は出さず」というスタンスのため、私のようにまったく親を頼れない身としては、この孫育てという言葉は憧れのような響きさえ感じます。
ですが、孫育てにおける世代間トラブルも増えてきているのだそうですね。
「親が古い子育て観を押し付けてきて困る」
「子供達がなにかと頼ってきて迷惑」
孫と頻繁に交流ができる孫育て世代と、仕事に家事に育児に忙しい子育て世代が互いに関わることで孫育てはウィンウィンの状態になるのではないかと一見思えますが、事態はそう単純ではないようです。
そんな事を考え出したのも、実際に現在絶賛孫育て中のご近所さんから孫育てに関する愚痴を聞いたのがきっかけでした。
いろいろ調べていく中で、そのような不満が互いに募っていく原因が見えてきましたので、今日はそんなお話を書いてみようと思います。
子育て世代の意識調査の結果
平成25年度「家族と地域における子育てに関する意識調査」という内閣府の調査報告書に興味深いデータがありました。
「祖父母が育児や家事の手助けをすることが望ましいと思うかどうか」という設問に対して、78.7%の子育て世代が「望ましい」と思っている事がわかりました。
(出典:内閣府HP より)
20~49歳までの有配偶者420人を対象にした調査でしたが、この結果は、約8割の子育て世代が祖父母の孫育てに対して好意的な見方をしていると捉える事ができます。
中でも、「実際にして欲しい手助け」としては、1位は「子どもの話し相手」、2位は「子どもに経験や知恵を伝える」、3位は「子どもの日常生活上のしつけ」などを希望していることもわかりました。
(出典:内閣府HP より)
子育て世代の年齢や、また彼らが共働きかどうかなどの生活スタイルによっても祖父母に期待する手助けの内容は異なってくるようですが、この調査から言えることは、子育て世帯は祖父母に対して子どもの教育やしつけなどに対して概ね期待をしているということです。
すでに子どもを育て上げている祖父母に対して、子育て世代が知識や経験を求めるということは、祖父母世代にとってもうれしいものではないかと思うのですが、そんな孫育て世代への意識調査では意外な結果が出ていたのです。
孫育て世代の意識調査の結果
第一生命経済研究所の調査によると、「子育ては祖父母を頼らずに、親自身で行うべきだ」と考えている人が79.9%にもなることがわかりました。
(出典:祖父母による孫育て支援の実態と意識ー第一生命経済研究所HP より)
一方、「孫の親に頼まれて孫の面倒を見たことがある人」の割合は66.4%に及んでいるという実態も出てきています。
(出典:祖父母による孫育て支援の実態と意識ー第一生命経済研究所HP より)
この調査では「孫の世話は大変だが、娘や息子のために引き受けるべき」と考えている祖父母が71.7%にのぼるという結果もでています。
私はこの結果から、孫育てに対する子育て世代と祖父母世代の意識のギャップが大きい事が孫育てトラブルに繋がっていると感じました。
2つの調査結果からみえてきた事
この2つの調査結果から、子育て世代と孫育て世代の意識についてまとめると…
【子育て世代の意識】
【孫育て世代の意識】
このような感じではないでしょうか。
子育て世代は「家事に育児に仕事にとにかく忙しい」→「おばあちゃん、暇だよね?」という意識がどこかにあるんだと思います。
共働きをしている家庭だと特に…
「保育園へのお迎え時間に間に合わないから、おばあちゃんお願い」
「そもそも保育園に入れないから、おばあちゃん日中お願い」
「ついでにご飯作っといてもらえると助かるから、おばあちゃんお願い」
などと、実の親で頼みやすいということを理由に、子育て意外にも親を頼ってしまう傾向にあるのではないでしょうか。
祖父母としては孫と触れ合えるのは嬉しいと思う一方、それが「ちょっと子どもみてて」→「ついでに家事もお願い」という流れがいつの間にかできてしまうと、「なんでそこまでしなきゃいけないの?」という感情が疲れと共に出てくるのだと思います。
以前も記事にしました「実家依存症の妻」などはその傾向が強いのではないでしょうか。
実家依存症の妻が増加中の原因とは?夫と家庭内トラブルに発展する前に親との関係を見直してみよう。
祖父母としては「子どもに苦労をさせたくない」という思いから、ついつい孫育て+αをやりすぎてしまうのかもしれませんが、先日そんな孫育て中の方から貴重な愚痴を聞くことができました。
孫育てをしている人から実際に聞いた愚痴とは
その方は現在70歳ですが、毎日のように同居していない娘夫婦の家へ手伝いに通っています。
娘は正社員で子供も小中学生から幼児まで4人もいるということで、祖母の手助けなくしては娘家族は成り立たないような状況のようです。
具体的には、その祖母は毎朝娘家族が起きる前に家に行き、家族の朝食を作り皆を職場や学校へ送り出します。(娘家族の近くに住んでいる)
保育園への送り迎えを行い、昼間は一息つける時間があるものの、小学生の孫たちが帰ってきた後は、宿題をさせながら夕飯作り。
夕方帰宅した娘夫婦や孫たちと食事を共にした後、自宅へ戻り、入浴して寝るだけの生活なのだそうです。
その方も毎日孫達に会えるというメリットは感じているようでしたが、娘さんが仕事から戻ってきて出来上がった夕食を前に「さーて、ご飯食べようかなー」などと言うとイラっとくることもあるのだそう。
「私が子育てをしていた時は全部自分でしていたのに…」と悶々とすることもあるのだそうです。
それでも娘に手をかしてしまう祖母と無邪気な娘さんの話を聞いていて、私はこういうところに孫育てのトラブルは潜んでいるのだなと感じました。
上手く孫育てをしてもらうために子育て世帯が意識しておきたいこと
そもそも孫育て世代が子育てをしていた時代も、子育てには祖父母の手助けはあったと思います。
私たちの親世代が子育てをしていた時代は同居世帯も多く、子育てに祖父母が介入するのはごく自然なことであったはずです。(もちろんご家庭により差はあるでしょうが)
親・祖父母関係なく、手が空いている人が子どもの世話をし、その時にできる方が台所に立ち家庭内が上手くまわっていたと推察されます。
ですが、現代では同居世帯は昔ほど多くはなく、晩婚化・核家族化も進み、同時に仕事を持つ母親も多くなってきました。
子育て世代を手伝う祖父母も高齢な場合が多くなり、そのような祖父母が子育て世代と同じように家事・育児をすることはやはり体力的にも限界があります。
「娘や息子に協力したい」という思いがある一方で、かつて子育てをしていた頃と同じように体が動かないという現状もあるのです。
そんな時に、娘や息子から自分がやっている孫育てについて当然のような態度をとられてしまったら?
よかれと思ってやっていた育児に対して「余計なこと(古い育児法)しないでよ」などと言われてしまったら?
祖父母としては腹も立つかもしれませんね。
それでも協力してしまう祖父母側にも問題はあるのでしょうが、私は子育て世代がもっと孫育て世代へ感謝の気持ちを表す事が大切なのではないかと考えています。
祖父母から手助けをしてもらっている子育て世代の方は、もしかしたらその状態がすごく恵まれているということに気がついていないのかもしれません。
すごくラッキーなことなのだと。
私などは両親の手助けをまったく得られないとはいえ、働きにも出ていないため、仕事を持っているママさんからすると、家事・育児の苦労は微々たるものかと思います。
実際、親に頼れない正社員のママ友に話を聞くと、「小1の壁」といって、小学校入学後をどのようにやっていくかで相当悩んでいました。
夕方までフルに働いて、買い物して、子供を迎えに行って、夕御飯を食べさせて、お風呂に入れて寝かせる。毎日自分が何をしているのかわからなくなる時があるとも言っていました。
祖父母の手助けを得られている人は、ここまでの苦労はないのではないでしょうか。
女性の社会進出を推奨している現代の日本において、その後押しになるような制度が追いついていない現状というのも子育て世代を苦しめているひとつの要因でしょう。
ですが、そんな中でも祖父母が生活の手助けをしてくれる環境でいられるという人は、そのありがたい状況をもっと感謝して良いと思うのです。
「いつもありがとう」と日頃から祖父母に感謝の気持ちを伝えるようにする。
仕事が休みの日は、祖父母にも好きな事をしていてもらう。
「自分も仕事が休みの日はゆっくりしたいしなー」とついつい休みの日まで祖母に家事などをお願いしてしまいそうになるかもしれませんが、それでは祖父母は休む暇がありません。
子育て世代も自立しましょう。
祖父母の手助けがまったくない(しかも口出しだけはされる)私がついつい羨ましくていろいろ書いてしまいましたが、大事なことなのでもう一度言います。
祖父母を頼れる人は本当に恵まれています!
娘・息子には愚痴も言わず(なので私などに言ってくるのでしょうが…)、手助けをしてくれる祖父母の存在は貴重です。そうたくさんいるものではないです。あーいいな。
上手に孫育てをしてもらうには、一に感謝、二に感謝。
子育て世代は、たまに間違った祖父母の子育て法を優しく指摘してあげれば良いと思います。
祖父母の元気は有限です(笑)
長く良い関係を続けるためにも、祖父母の立場や体調も考えながら子育て世代は付き合っていくべきだと思ったという話でした。
福岡市在住。年の差3兄弟を育てています。
次男が知的境界域の自閉症スペクトラム(ASD)です。
発達障害のこと、子育てのこと、趣味のビュッフェ巡りや旅行について書いています。
社会福祉士です。
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