先日、次男が通っている療育園主催の講習会に参加してきました。
今回のテーマは「ことばを育てる」ということで、発語の遅れが見られるお子さんの保護者がたくさん参加していらっしゃいました。
1時間程度の専門家による講演会で学べたことは…
■言葉とコミュニケーションの関係性
■言葉が育つまでの発達過程
■言葉を育てる効果的なトレーニング法の紹介
など、学問的な側面と実践的な内容を織り交ぜたもので、非常に有益な時間を過ごすことができました。
現在自閉症スペクトラムと診断されている次男ですが、彼の大きな特徴の一つとして言葉の遅れがあります。
4歳になり、最近では(母)「今日は何して遊んだ?」(次)「遊戯室、遊んだ」など微妙ながらも会話が成立するような場面も多くなり、ゆっくりではありますが次男なりの言葉の成長を感じている日々です。
ただ、「このまま言葉はちゃんと育ってくれるのだろうか…」など不安もやはりあるわけで…。
そんな中、今回参加した講演会では次男の言葉の発達にかんして明るい見通しが持てるようなお話も聞くことができましたので、発達障害児と言葉・コミュニケーションの関係性などについて備忘録としてまとめておこうと思います。
コミュニケーションとは何か
言葉とはコミュニケーションの一つの手段です。
このように言うと「コミュニケーションこそが言葉ではないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、実は私たちは自分以外の人とコミュニケーションをとる際、言葉以外のさまざまな方法を活用しています。
アイコンタクトや手足による仕草・顔の表情など、言葉を使わずに他人に意思を伝える方法はたくさんあります。
そして、私たちはそれらと言葉を無意識のうちに組み合わせて、相手に自分の意思を伝え、相手の反応を受け止めているのです。
このように、コミュニケーションとは自分以外の相手との精神的な交流を図る手段のことを言いますが、その発達は大きく4段階に分けられるそうです。
発達段階 | 開始目安月齢 | コミュニケーション手段 |
聞き手効果段階 | 生後~10ヶ月頃 | 意思は聞き手である大人によって解釈される |
意図的伝達段階 | 10ヶ月~1歳頃 | 意思を行為で伝えることができる |
命題伝達段階 | 1歳~1歳4ヶ月頃 | 意思を言葉で伝えられるようになる |
文と会話段階 | 1歳半~2歳頃 | 文章での表現がはじまり、徐々に会話スタイルへ移行 |
表現が少々難しい感じがしますが、簡単に言うと、コミュニケーションはまず言葉以外の方法から発達してくるということです。
聞き手効果段階では、言葉を発することのできない赤ちゃんであっても、キャッキャと笑っていれば「楽しいの~?」と大人は赤ちゃんの気持ちを酌んで代弁するように話しかけたりしますよね。
また、意図的伝達段階では、子供が何か取って欲しい時に指差しをしたりするのがそうです。
命題伝達段階においては、「ぶーぶー(車)」「わんわん(犬)」などを簡単な擬音語で子供自身が表現するようになってきます。
それが次第に二語文となり、会話スタイルへと変わっていく過程(文と会話段階)を経て、人はコミュニケーションの道具として言葉を獲得していくようになります。
そのため、言葉を育てるには我が子が今発達段階のどの辺りにいるのかを親はしっかり把握しておかなければなりません。
聞き手効果段階にある子供に言葉を話させようとしても、それを獲得するまでのステップを子供自身が踏んでいないと言葉は使いこなせないのです。
そして、我が子が今どの発達段階にいるのかによってその関わり方も変わってくるため、子供の状態の見極めがとても大切になってきます。
コミュニケーションの発達段階を見極める5つの目安
言葉が育つには、まずは子供自身が「誰かに自分の意思を伝えたい」と思うこと(コミュニケーションを自発的に取ろうとする姿勢)が必要になってきます。
ここでは、子供が今どの程度のコミュニケーション能力の獲得段階にあるのかを知る目安を5つご紹介します。
1.人との関わりを持てるか
コミュニケーションの第一段階として、まずは他人に興味を持っているかということが重要になってきます。
それを知るには「子供と目が合うか」を確認すると良いです。
目線が合うということは、子供の中でその相手を認識し、意識しているという証になります。
我が家の次男もいまだにそうなのですが、初対面の相手とはなかなか目を合わせようとしません。
これは以前笑ってしまった出来事なのですが、発達検査を受けた際、「次男君~、こんにちは」と話しかける医師に対して、次男は頑なに目線を合わせず、医師から肩を掴まれて次男の顔の目の前に医師の顔があるにも関わらず断固目をそらし続けたという出来事がありました。
これはもう完全に相手の存在を拒否している証拠なのですよね。「俺に構うな」っていう、これもある意味次男の意思表示でもあると思います。
コミュニケーションというのは相手を受け入れる体勢が自分の中でできていないと成立しないわけで、他人との関わりが持てない・持とうとしない子供にかんしては、まずは外の世界に興味を持たせるよう促してあげることが重要になってきます。
2.物を使って人との関わりが持てるか
これは人とやり取り遊びなどを通して関わりが持てる段階にあるのかどうかということです。
例えば、おもちゃなどを大人が「はい、どうぞ」と言って子供に渡す。
その後、子供に「ください」と大人が声をかけて、子供がそれを渡してくれるかどうかというところで判断できます。
これがある程度できていると、子供の中で「理解言語」というものが身につき始めていると考えられ、言葉の獲得に向けて一つ上の段階に進んでいると推察されます。
子供自身が言葉を発することはできないけれど、相手の言っている言葉の意味を、相手の行動から理解できている段階です。
一緒にこのようなやり取り遊びをする中で、この段階の見極めは可能になります。
3.人の仕草を真似るか
他人との簡単なやり取りができるようになれば、今度は相手のすることを真似しようとするかどうかでその発達段階を知ることができます。
例えば、「バイバイ」と手を振って見せたら、同じように手を振れるか。
または幼児向けのテレビ番組などを見ていて、テレビの中の人物の踊りにあわせて踊るというのも模倣です。
言葉が育つ上でもこの「真似る」という行為は大切なので、まずは他人の行動を模倣しようとするかどうかというのも大切な判断基準となります。
4.言葉での指示がわかるか
「(ゴミを)捨てて」「(おもちゃを)取って」など大人が言葉のみで与えた指示を子供が理解できるようになると、コミュニケーションの段階はさらに上がります。
この段階になってくると、子供自身が言葉を発することはできなくても、身振りなどにより何らかの意思表示をするようになってきます。
理解言語も増えてきているため、いわば言葉を溜め込んでいるインプット状態にあると言えます。
言葉での指示が伝わるようになったら、大人は積極的に声かけをして、理解言語の幅を広げてやるようにすると良いようです。
5.言葉で意思を伝えられる
子供自身が言葉で意思を伝えられるようになると、会話段階へと必ず進んでいくものだそうです。
よく「5歳までに言葉がでないと喋れなくなる」というような話も聞きますが、今回講演していただいた講師の方によると、たとえそれが喃語のような意味を持たないものであったとしても、発語がある子供の場合はいくつになっても言葉は育っていくのだそうです。
実際、重度の自閉症のお子さんが高校生になって会話ができるようになったという例もあるようです。
言葉というのは成長にかなりの個人差があるそうなので、親は焦らず、周りと比較せず、その子の状態というのをしっかり把握して寄り添って上げることが、結果言葉の成長につながるとおっしゃっていたのは非常に印象に残っています。
コミュニケーション能力を伸ばすためには
このように、子供が言葉を獲得していく段階は、意外と細かく分かれていることがお分かりになると思います。
そのため、コミュニケーション能力を伸ばす(言葉を育てる)ためには、子供の発達段階に合った支援や援助が必要になってきます。
我が子が今どの段階まで理解し、できているのかを親が知ることがまずは第一歩です。
そして、子供自身が意思表示をしたいと思えるようになるためには、全ての主導権を子供に持たせることが大切だとのこと。
大人が先回りして何かに付け行ってしまえば、子供の自主性は育ちません。
なんかこの部分は、毒親持ちの私としては非常に響く部分があるのですが(笑)、親としては子供の関わり方に合わせた接し方を行っていく必要があります。
子供のペースに合わせるということは、時に「ひたすら待つ」という忍耐が必要な場合もあり、「もう、私がやってしまった方が早い!」と場合によっては思う時もあるかと思います。
そんな時に思い出したい言葉として「大人の基本姿勢(SOUL)」というのを教えていただきました。
・Silense(静かに見守ること)
・Observation(よく観察すること)
・Understanding(深く理解すること)
・Listening(耳を傾ける)
これらは簡単なようで意外と普段できていないことばかりです。
私自身もこの4つの基本姿勢は忘れずに、我が子と接していこうと気持ちを新たにしました。
言葉を育てるための具体的な4つの働きかけとは
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子供の言葉を育む上で効果的な4つの働きかけというのも講演会にて教えていただきました。
■ミラリング…子供の動作を真似る
■パラレルトーク…子供の思いを代弁する
■モニタリング…子供の言葉を真似る
■モデリング…言葉の見本を示す
これらを子供の発達状態に応じて使い分けることで、言葉の習得がより効果的になるそうです。
まだ言葉を発していない子供にとって大人が同じ動作をするということは、子供が外の世界へ興味・関心を持つきっかけになります。
子供が言葉にならない思いを伝えたがっている様子があれば、それを大人が代弁してあげることで、子供の中で思いと言葉の関連付けができてきます。
子供が発した言葉を大人が真似ることで、子供は自分の思いを共感してくれる人がいると分かり、安心して自分の思いを発信できるようになります。
大人が子供に言葉の見本を示してあげることで、語彙力が増えるだけでなく、子供自身が自分の思いを適切な表現で相手に伝えられるようになります。
ここで大切なのが、「子供の言葉の言い間違い・覚え間違いを正さない」ことなんだそうです。
我が家の次男も言葉の覚え間違いが多く、ダンゴムシのことを「ダンゴグシ」、バナナのことを「バナナナ」などと正確に覚えていない固有名詞がたくさんあるのですが、そのような時に親は「ダンゴグシじゃない!ダンゴムシでしょ」などと真っ向から訂正することは避けた方が良いそうです。
子供なりに言葉を使って表現をしようとしているのですから、それがたとえ間違った表現であっても、大人がそれを否定してしまうことで、子供が外へ自分の思いを発信しようとする意欲を失わせることにつながってしまうからです。
子供が「ダンゴグシ、いた」などと話しても「そうねー。ダンゴムシいたね」と正確な言葉で言い直してあげる方が言葉を育てていく上では効果的なのだそう。
ここでも大人の基本姿勢(SOUL)のUnderstandingの部分が重要になってきます。
発語を促す遊びを日常に取り入れる
講演会では言葉を獲得し発するまでの発達過程について学ぶことができましたが、私がそこで気づいたのは…
「子供自身が自分の思いを誰かに伝えたいという気持ちを育む」
ことが言葉の発達にとって重要なことだということでした。
ですが、実際には運動面の問題で言葉を発することが困難なお子さんもいます。
口の周りの筋肉や舌の使い方が上手でない場合は、「サ行」の発音が上手にできなかったりする場合も多いとのこと。
そこで言葉を発する上での運動面の機能にアプローチをする方法も教えていただいたのですが、これが意外と普段遊びで取り入れているようなものばかりでした。
発語の運動機能面で効果的なのは、「吹く」という動作だそうです。
そのため、シャボン玉遊びや風船遊び、ハーモニカを吹くなどが言葉を発する練習に最適なのだそう。
風船などは腹筋の力も鍛えられそうで良さそうですよね。
また、「噛む」という動作は顎の筋力強化と脳細胞の活性化に同時に働きかけるので、これも積極的に子供に取り入れて欲しいと講師の方はおっしゃっていました。
我が家は比較的歯ごたえのあるものが好きな家族のため、日頃から私も食感というのは意識して料理をしている方なのですが、このお話を聞いて、おやつもやわらかい物が多い洋菓子よりも、せんべいやナッツなどを選んで食べさせるようにしようかなと考えています。
言葉についての講演会を聴講してきた感想
次男の療育園での勉強会は何かとためになるものが多いのですが、今回も非常に興味深く、有益な内容をたくさん得ることができました。
講演会の内容を次男に当てはめて考えた場合、次男は現在二語文が出ている状態で、「眠たい」「欲しい」「嫌だ」「きつい」などの意思表示もできるようになっているため、今後は言葉を増やしてやる段階だと気づきました。
次男と一緒にいろいろな体験をしながら、親がそれに言葉を添えてやることが効果的ではないかと考えています。
次男の場合、言葉でどう表現して良いかわからない場合は「う~、う~…」と唸りながら何かを一生懸命伝えようとしていることがあり、そのような時が言葉を覚えさせるチャンスなのだと思っています。
「子供の思いを代弁してあげる」という場面なのでしょうが、適切にそれを行うためには、やはり日頃から子供の様子をよく観察しておくことが大切なのですよね。
これはある時に言語聴覚士の方がおっしゃっていたのですが、「子供が言葉を覚えていくためには、大人と子供が同時に同じ物事を見つめていないとダメなんです」とのこと。
いくら親が「りんご」という言葉を覚えさせようとしても、子供の意識がりんごに向かっていないと、親の声掛けは子供には一向に届かないのだそうです。
子供の興味の方向性を知り、親がそれに寄り添ってあげることで言葉は育まれる。
このことは言葉の獲得だけの話ではなく、家族の絆作りという面でも大切なことではないかなと思えた今回の療育講演会でした。
福岡市在住。年の差3兄弟を育てています。
次男が知的境界域の自閉症スペクトラム(ASD)です。
発達障害のこと、子育てのこと、趣味のビュッフェ巡りや旅行について書いています。
社会福祉士です。
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