「良かったー。結構つけている人多くて」
先日、久々に産婦人科を訪れた私は(妊娠ではないです 笑)、意外と多くの妊婦さんがマタニティーマークをつけていた事にホッとしました。
というもの、最近ではマタニティーマークを巡っていろいろなトラブルがあるそうで…。
「マタニティーマークをつけて電車に乗っていたらマークを引きちぎられた」
「スーパーのカートをお腹にグイグイ押し付けられた」
「わざと足を踏まれた」
「電車に乗っていただけで舌打ちされた」…
などなど、知れば知るほど「本当にそんなことってあるの?」と信じられないような気持ちになるものばかりです。
私も長男と次男を出産していますが、共にマタニティーマークはバッグにつけて妊娠期間を過ごしました。
が、特にこんな嫌な思いをすることもなく…。
長男は宮崎で、次男は東京と福岡で妊娠生活を送りましたが、どこでもマタニティーマークのおかげか席を譲ってもらえたり親切にしてもらえることが多かった覚えがあります。
ですが、私のようにマタニティーマークをつけている事で恩恵を受けている妊婦さんばかりでないのも事実です。
では、なぜ今このように妊婦さんがマタニティーマークをつけづらいような社会になっているのか。
それはマタニティーマークに対する認識が間違っている方や、個人的な感情を妊婦さんにぶつけてしまう人など理由は多岐に渡るように感じています。
ただ、私自身の意見としては、自分の経験からもマタニティーマークは妊婦さん、それも妊娠初期の人ほど必ず身につけてもらいたいという思いが強いです。
今日はそんなマタニティーマークの必要性についてお話していこうと思います。
マタニティーマークをつける本来の意味とは
マタニティーマークについては、厚生労働省においてこのように定義されています。
- 妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけ、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくするもの。
- さらに、交通機関、職場、飲食店、その他の公共機関等が、その取組や呼びかけ文を付してポスターなどとして掲示し、妊産婦にやさしい環境づくりを推進するもの。
出典:厚生労働省JP より
この文言だけ見ると、私は公共の場で「妊婦を特別扱いしろ」と言っているように思えてなりません。
が、マタニティーマークをつけるって実際はそういうことではないと思うんですよね。
妊娠初期のようなお腹が目立たない時期こそ、妊婦さんにとってもお腹の赤ちゃんにとっても重要な期間になります。
私も次男を妊娠時に初期の段階で非常に大変な思いをしたのでわかるのですが(後述します)、そのような時でも外出しなければならない時はありますし、外で不測の事態が起こってしまうかもしれないという状況の中では、何か起こった時に妊娠中と分かってもらい適切に処置してもらえる意味でマタニティーマークは必須だと思うのです。
妊娠初期の体にはこんな危険が…
妊娠初期とは主に1ヶ月(~3週目)から4ヶ月(~15週目)までを指します。
この時期は流産が起こりやすい時期でもあります。
流産してしまう理由はさまざまありますが…
■胎児の染色体異常などによる先天的な問題
■子宮頚管無力症などの妊婦が体に抱えている問題
■ストレスや体調不良などによる外的要因
などで流産が起こってしまいます。
また、この時期は人によってはつわりなどもひどくなってくるので、お腹が大きくない故に他人に妊娠は気づかれにくいものの、体としては非常にしんどい時期でもあります。
専業主婦だったり、第一子の妊娠だったりする場合は、このような妊娠初期には大事をとって安静に出来る人もいるでしょうが、お仕事をされていたり第二子・第三子の妊娠の場合はなかなか自分の体調優先にもできません。
そういう見えない事情を周囲が思いやってあげるためにも、マタニティーマークは必要だと思うのです。
切迫流産を経験した次男妊娠時
Staring Out Into The World / dlee13
次男の妊娠がわかった当時、私たち家族は東京に住んでいました。
2011年の春、東日本大震災が起こった直後に判明した私の妊娠。
当時の東京は非常に混乱していて、スーパーの商品がことごとく無くなり、電気は計画停電で定期的に電力供給が絶たれ、また当時2歳だった長男を抱えながら、ただ生活するだけでも非常に大変でした。
もちろんこんな私の生活より、津波被害に遭われた方々の方が大変な思いをされているのはよくわかっていましたが、私も突然訪れたこの不安定な生活により、次男の妊娠発覚後すぐに不正出血を起こしました。
診断名は切迫流産。
出血量もかなり多く、当時診てもらっていた医師からは「これはダメかもしれない」と言われ、計画停電で電気がとまった寒い部屋の中でひとり泣いていたのを思い出します。
実家は遠方で頼れる人もなく、ただ唯一の望みはその春に九州への転勤が決まっていたことでした。
それまではなんとか頑張ろうと思い、体調の悪い中どうにか生活していた覚えがあります。
結局、出血量は少しずつ減っていき、その後心拍も確認できたため次男を出産することができたのですが、私はこの自分自身の経験から「妊婦さんの中には一見して分からない問題を体に抱えている人もいるかもしれない」と思えるようになりました。
ただ、これを周囲の人が知るためにはマタニティーマークの存在は必要なのです。
不妊治療をしていた当時の私の気持ち
♡ pregnant / geishabot
次男は切迫流産を乗り越えてからは、出産まで順調にいくことができました。
ですが、実は私は長男を妊娠するまでは不妊治療をしていました。
結婚して数年経ってもなかなか妊娠することがなく、不思議に思い検査してみたところ、妊娠を維持する役割の黄体ホルモンの値が低い事がわかりました。
そのため、タイミング療法にチャレンジする中、黄体ホルモン注射も定期的に接種していたのですが、そのように不妊治療として産婦人科に通う当時の私の気持ちは非常に微妙でした。
産婦人科で周りをみればお腹の大きな妊婦さんや、小さな子供が走り回っていたりと、正直「羨ましい…」という気持ちがなかったかと言えば嘘になります。
だからといって、妊婦さんに嫌がらせしようなどという気持ちにはなりませんでしたが、マタニティーマークによるトラブル事例を聞いていると、そこには妊婦さんに対する「嫉妬」の感情があるように思えてなりません。
「子供が欲しいけれども事情により授かれない」
「現在不妊治療中だけど先が見えなくて不安」
など、個人の抱えている事情を、他人のマタニティーマークを見てしまったことで八つ当たりをしているように感じます。
悲しいことですが、マタニティーマークに対してそのように感じる人もいるのだという事実は妊婦さんも受け止めておくべきだと思います。
だからといって、知らない誰かに遠慮してマタニティーマークをつけずに不測の事態で妊婦さん自身の身に何か起こってしまっては本末転倒です。
「嫌がらせが怖くてどうしてもマタニティーマークをつけることができない」という方は、バックに忍ばせて携帯しておくだけでも良いと思いますよ。
マタニティーマークをつける側が考えておきたい事
マタニティーマークは「見た目には妊娠しているか分からない人が何か体に不調をきたした場合に、適切な処置を受けられるために携帯しておくもの」です。
ですが、マタニティーマークに対してそのような認識をしている一般人は意外と少ないというのも事実です。
中には、電車で席を譲ってもらいたいアピールとマタニティーマークを捉えている人もいます。
そのような人にとっては、マタニティーマークをつけている人自体に不信感を抱いてしまうもので、これはマタニティーマークの正しい認識が広まっていないことが問題だと思います。
ただ、妊婦さんの中にもこのマタニティーマークを「何でも優先してもらえる証」のように捉えている人がいるのも事実で、このような妊婦さんのせいでマタニティーマークの印象が悪くなっているという実態もあります。
実際、「妊娠期間が終わっても、毎日の通勤電車で毎回座りたいから、マタニティーマークはつけっぱなしにしている」という話も聞いた事があります。
このような低モラルな行動は、今後の妊婦さんがますます生活しづらい世の中を作ってしまう原因だとやっている本人も気づかなければなりません。
妊婦さんも「やってもらって当然」な態度ではなく、親切にされたら遠慮なく甘えてお礼をきちんと言うなど、謙虚な姿勢でいることができれば決して悪い印象を与えるものではないと思います。
妊婦さんはマタニティーマークを恐れずにつけてください。
それに良くない感情を抱いている一部の人間がいたとしても、残りの多くの人たちはそのマークに気づく事で何か手助けしてあげたいと思っています。
私もそうですが、まだお腹の大きくない女性がマタニティーマークをつけているのを見ると「あ、初期なのかな。具合悪くないのかな」と、過去の自分についつい照らし合わせてしまいます。
世の中、妊娠出来る人・できない人・妊娠しずらい体質でも授かれた人・望んでいない妊娠をしてしまった人…などなど本当にいろいろな人がいます。そしていろいろな人がいるのが当たり前なのです。
何かにつけて私はよく言っていますが、想像力を持つことは生きる上で本当に大事なことだと思います。
今自分が見えている事が物事の全てでないと知ることは大切です。
マタニティーマークをつけている人に嫌がらせをする人というのは想像力に欠ける人たちです。いろんな意味で。
妊婦さんもそうでない人たちも、一人ひとりが思いやりを持った行動ができれば、このマタニティーマーク問題も解決できない課題ではないような気がします。
福岡市在住。年の差3兄弟を育てています。
次男が知的境界域の自閉症スペクトラム(ASD)です。
発達障害のこと、子育てのこと、趣味のビュッフェ巡りや旅行について書いています。
社会福祉士です。
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