自閉症スペクトラムの次男には、聴覚過敏があります。
特定の音に対して強烈に反応するので、日常生活に支障がでているという話は以前書きました。
そんな次男の聴覚過敏対策として、現在使っているのが「イヤーマフ」です。
「イヤーマフ、なにそれ?」な方もいるかもしれませんね。
私の周りでは意外とイヤーマフを使っている子は多いのですが、日頃から発達障害児と関わりのない方だと、このイヤーマフの存在自体ご存知ないかもしれません。
ということで、今日はイヤーマフとはどんなものなのか、効果や実際に次男が使ってみての感想などをまとめてみようと思います。
イヤーマフをつけている子が好奇の目でみられないよう、イヤーマフ知名度向上委員会の一員としてイヤーマフの宣伝をさせていただこうと思います。
※イヤーマフ知名度向上委員会は私が作った架空の組織です
イヤーマフってどんなもの?
イヤーマフは耳につける防音具です。
寒い時期につける「耳あて」や、音楽を聴くときに使う「ヘッドホン」のように、頭で固定して耳全体を覆うつくりになっています。
もともとは、空港や工事現場など、音の大きな場所で作業する人の耳の聞こえを保護するために使われていたものです。
もちろん現在もそのような場所でイヤーマフは使われているのですが、心身面のいろいろな問題で聴覚過敏がある人にも利用されるようになってきました。
聴覚過敏グッズの種類
イヤーマフについて詳しく説明する前に、聴覚過敏の対策グッズをいくつかご紹介しておこうと思います。
防音具には、2つの種類があります。
イヤーマフのように耳全体を覆うタイプの「ヘッドホン型」、もうひとつは直接耳にはめ込む「耳栓型」です。
どちらにもメリットはありますが、子どもの場合は使いやすさからイヤーマフを選んでいるケースが多いように感じます。
イヤーマフ
価格帯は、1,000~6,000円程度です。
我が家はこちらのイヤーマフを買いました。
お値段が安かったので心配もありましたが、音も十分軽減されますし(実際私が装着して確認しました)、つくりも問題なかったです。
また、聴覚過敏のお子さんが使っているイヤーマフでは、このペルターのものが一番人気かもしれません。
小学校の支援学級に見学に行った時も、このイヤーマフをクラスに常備していました。
お値段もそれなりにするだけあって、つくりもしっかりしていますし、使い心地の安定感は抜群です(また、私が実際に装着させてもらい確認しました…)
ただ、イヤーマフは価格の違いはそこそこあれど、遮音値はそれほど変わりはありません。
どれもしっかり音を軽減してくれます。
余談ですが、個人的にデザインがかわいいなーと思ったイヤーマフがこちら。
カップにスマイルの絵が描かれています。てんとう虫なのも。
■紛失しにくい
■目立つ
耳栓タイプ
耳栓タイプの防音具は、2種類あります。
ひとつは、直接耳に栓をするだけの「アナログタイプ」の耳栓。
子供用の耳栓というのも、今ではいろいろな種類が販売されています。
耳栓タイプのメリットは、目立ちにくいというところ。
イヤーマフのように、周囲からジロジロ見られたりする可能性は少ないので、外出先でも気兼ねなく使うことができます。
ただ、感覚過敏の強い子の場合は、耳の中に直接何かを入れるということに嫌悪感を持ってしまう場合もあるかもしれません。
そして、もうひとつは「デジタルタイプ」の耳栓です。
スイッチひとつで騒音のみをカットできたりと、利便性が高いのはこのタイプの耳栓だと思います。
ただ、幼児の場合、果たしてこれを使いこなせるのか…。
私個人の印象としては、このデジタル耳栓は中学生くらいのもうちょっと成長した段階で、聴覚過敏に悩んでいるようなら使ってみたいと考えています。
■目立ちにくい
■無くしやすい
防音グッズの選び方
防音グッズを選ぶ時には、お子さんとの相性が大切だと感じています。
次男の場合、耳の中に何かを入れるという行為自体がNGだったので、その時点で耳栓という選択肢はありませんでした。
また、次男は人一倍耳の穴が小さいということもあって(いまだに一般的な綿棒・耳かきは入らないです)、最適な耳栓探しが難しいのではないかと思っていたのも理由のひとつです。
ただ、イヤーマフを購入する時も事前準備はいろいろしていました。
イヤーマフの存在や、その使い方、使ったらどうなるか…などを、ネットの画像や実際に使っているお子さんの様子を見せて、次男にイメージトレーニングさせていました。
そして、次男が「お耳のやつ、使いたい」と言い出したタイミングで一緒にイヤーマフを選び、好きな色などを本人に決めさせて購入したところ、初日からすんなり使えるようになりました。
我が子にはどのタイプの防音具が合っているかというのは人それぞれちがいます。
また、成長に応じてイヤーマフ・耳栓、どちらが使い勝手が良いのかというのも変わってくるかと思います。
思春期になって、イヤーマフの目立つ感じがイヤになることもあるかもしれませんし。
それぞれのメリット・デメリットを参考にして、その時のお子さんが一番スムーズに使えそうなものを選ぶのが一番だと感じています。
イヤーマフの効果
では、イヤーマフはどのような効果があるのか。
音というのは実際に自分が聞いてみないと分かりづらいものなので、このような一覧表を作ってみました。
音の大きさはdB(デシベル)という単位で表します。
単位の細かい説明は省くとして、数字が大きくなるほど音も大きくなると理解しておくとよいかと思います。
この音の感じ方のレベルを下げてくれるのが、イヤーマフなどの防音具です。
イヤーマフなどには「遮音レベル(NRR)」というものがあり、どの程度音を遮断してくれるのか明記されています。
例えばこちらのイヤーマフ。
「遮音値25dB」とあります。
これは、通常感じる音のレベルを25dBほど下げて聞こえるようにしてくれるという意味です。
70dBの掃除機の音が、このイヤーマフをつけていれば…
70dB ー 25dB =45dB
になり、ちょっと人が多い昼間の住宅街の中にいるくらいの音の聞こえになるということです。
ただ、音の聞こえ方というのは人によって感じ方が違うかと思いますので、音のレベルというのはあくまで目安としてとらえておいた方がよいです。
イヤーマフを次男が実際に使ってみた感想
次男の聴覚過敏は、「他人の咳・くしゃみ」「電車の走行音」とかなり限定されています。
大きな音が苦手というよりは、この特定の音が嫌いという感じなので、イヤーマフを使う前もその効果について半信半疑でした。
イヤーマフを使うことで音の聞こえは小さくなっても、そもそもその音自体に苦手感があるわけですからね。
果たしてどうかなーと思ってしばらく使ってみましたが、電車の走行音については…
何の音?
と聞いてくるようになりました。
イヤーマフをしていないと「ムキー!」と言って怒り出す感じでしたが、そういうのはなくなりました。
ただ、他人の咳やくしゃみにかんしては、いつ・どこで・誰がするか分からないものですから、完全にイヤーマフだけで防ぐことは不可能です。
なので、外食時のお料理が出てくるまでの手持ち無沙汰な時間など、次男にとって音に過敏に反応しやすい状況の時は早めにイヤーマフを装着させるようにはしています。
また、最近では次男自ら「お耳のやつ、持ってきた?」と聞くことも。
イヤーマフは、本人にとっての安心材料にもなっているようです。
聴覚過敏は本人の精神状態によっても敏感さが変わってくるようで、次男は精神的に落ち着く環境・食事中・なにかに集中している時などは、苦手な音にもそれほど反応しません。
逆に、見通しの立ちにくい状況・精神的に不安な時には過剰に反応するので、私としては状況をみながらイヤーマフを使うタイミングを日々模索しています。
イヤーマフを手放せなくなるのではと不安だったが…
そういう意味で、イヤーマフは聴覚過敏があるからといって、一日中つけているようなものではありません。
次男に聴覚過敏があると分かり、療育園の先生からイヤーマフの使用をすすめられた時も…
イヤーマフ無しで暮らせなくなるのでは…
と不安な気持ちもありました。
ですが、実際に次男が現在つかってみて、イヤーマフは状況に応じて本人が使うタイミングを決められるようになるのが最終目標かなと感じています。
「ここはイヤーマフを使わなくても大丈夫そう」
「ここは不安だから使っておきたい」
子ども自身が自分の特性を理解して、その都度自分にとって過ごしやすいように環境調整できればそれが一番だと思っています。
また、成長に応じてイヤーマフを卒業し、今度は耳栓だったりスマホで音楽を聴くという風に苦手な音への対策も本人が自分で変えていくかもしれません。
そういう自分にとっての居心地の良い場所探しのひとつの手段として、イヤーマフは親子で幼い頃からその練習に取り組める良い製品だと感じています。
なので、もし街中でイヤーマフをしている子がいたら「音に苦手感があるんだな」と温かい目でみていただきたいです。
「小さい子に音楽きかせてる」とか「おしゃれのつもり?」などと誤解を受けやすいイヤーマフですが、それをつけている子というのは一般の方には理解しがたい程の音への抵抗感を持っています。
理解はできないかもしれませんが、そういう特性を持っている子がいることを知ってもらえるだけでもいい。
石井マークさんから聴覚過敏用のステッカーをいただいたので、こういうグッズも活用しながらイヤーマフを堂々と使っていきたいですね。
こんな子もいるんだという認識がもっと広まって、聴覚過敏の当事者にとっても生きやすい世の中になってくれれば…と願っています。
現在中学生の次男ですが、イヤーマフは結局小学校の支援学級(知的)に転校してから使わなくなりました。転校して環境が変わったことで、咳やくしゃみの音に対する聴覚過敏が消失しました。
福岡市在住。年の差3兄弟を育てています。
次男が知的境界域の自閉症スペクトラム(ASD)です。
発達障害のこと、子育てのこと、趣味のビュッフェ巡りや旅行について書いています。
社会福祉士です。
コメント
はじめまして。都内で教育関連会社勤務のしのぶと申します。私は福岡出身なのですが、おひとり様の家庭環境と私の実家が非常に似ており驚きました。特に時間を急かすお祖母様や、否定するお母様が。父が優しいというのも共通です。私は祖母の急死で、目の前が開けたと思っています。私は、母や祖母のようになるのが強く、結婚に前向きになれませんでした。おひとり様の素敵な子育てに、とても励まされました。ありがとうございます。
しのぶ様
ブログへのご訪問とコメント、ありがとうございました。
私は自分の体験を反面教師として子どもに接するよう気をつけています。
日々そのように思って生きていないと、「今の言い方、お母さんに似てたな…」と思うこともありますので。
私もしのぶ様と同じように、母の急死で世界の見え方が変わりました。
今まではそれが普通だと思っていた家族のあり方に疑問を持てるようになり、自分自身の考えをはっきり自覚できるようになりました。
今でもそうですが、帰省して祖母としばらく一緒にいると、頭の中がトランスしたような状態になってしまうんですよね(笑)
自分の考えで動く暇がないくらい、次から次へと指示がとんでくるので。
毒親育ちの唯一のメリットは、身を持ってその毒を経験していることで、自分の毒っ気に気づけるところだと思っています。
いつも完璧ではいられないですが、自覚ができる分フォローもできます。
お互い、前向きに毎日を楽しく生活していければいいですね^^