発達障害(自閉症スペクトラム)のある次男。
現在は年長児として療育園に通っているのですが、来年度の就学に向けて園でサポートブック作りを行っています。
就学・進学などで教育環境が変わる時に、特性のある子どもが園や学校でスムーズに生活が送れるよう、子どもの性格や特徴を教師や支援者と共有しやすくするためのもの
ファイルにとじて冊子形式にしたり、1枚の紙におさまるように内容を盛り込んだ形にしたりと、その形はさまざまです。
要は、新たな生活の場に子どもが安心して通えるようにするための情報共有ツールがサポートブックだと思ってもらえれば良いかと思います。
一言に発達障害といっても、その特性や困り感は子どもの数だけ違います。
子どもの普段の様子などをなるべく詳細にまとめておくことで、子どもと新たな関わりを持つ人がその接し方などで戸惑うことが少なくなります。
では、実際にサポートブックにはどのような内容を書けばよいのか。
今回は、療育園の先生方のアドバイスをもらいながら、私が学んだサポートブックの作り方をご紹介していこうと思います。
サポートブックのテンプレートはダウンロードが便利
サポートブック作りで大切なのは見る人へのわかりやすさです。
そのためには、子どもの特性を項目ごとに分けて簡潔にまとめる必要があるのですが、そのテンプレートを最初から自力で作るのはとても大変。
私は療育園からオリジナルの書式をもらいましたが、今ではインターネットで検索するとサポートブックのテンプレートをたくさん見つけることができます。
それぞれ特徴があるので、ご自身が書きやすいもの・書きたい項目が多いものなどで選ぶと良いでしょう。
いくつか候補をあげておきます。
■LITALICOジュニア サポートブック
チェックシート形式で子どもの特性を確認できる作りになっています。
■ドロップ・プロジェクトのサポートブック
絵カード作りでご存知の方も多いかと思いますが、ドロップ・プロジェクトでもサポートブックのテンプレートをダウンロードできます。
ハガキサイズのコンパクトな出来上がりになるのが特徴です。
■✩自閉症の子ども・星の子ども✩のサポートブック
軽度・重度、また幼児・大人などさまざまな書式が揃っているのが特徴。
私が療育園からもらった書式は、こちらのタイプに近いです。
■平岩幹男先生のHP
うさぎ1号先生としてもご存じの方も多いかと思います。
平岩先生のHPにも「就学に当たって学校との情報共有を図る文書」ということで、サポートブックのお手本を紹介されています。
内容としては高学年向きかなと思いますが、簡潔に情報共有するにはとても参考になります。
他にも探せばいろいろなタイプのテンプレートが見つかりますので、お好みのものを選ぶと良いかと思います。
手書きは変更が大変
もちろん、サポートブックを手書きで作ることもできるのですが、後々の変更などを考えた場合、私はパソコンでデータとして残しておく方が便利だと思っています。
子どもの特性は一時的なものも多々ありますし、それに伴ってサポートブックの内容もどんどん変わっていきます。
こまめに最新情報に差し替えていく必要があるので、手書きだと一部の変更のために全てを書き換えるというケースも無きにしも非ず。。。。
書式はすでに出来上がっているものをダウンロードして、必要なものだけ取捨選択をしながら、なるべく楽に作っていくのがサポートブック作りでは大切かと思います。
サポートブックに書きたい内容
では、実際にサポートブックにはどのような内容を書けば良いのか。
普段いっしょに生活している我が子のことであっても、どんな性格でどんな特徴があるのかを客観的に見るのはなかなか難しいものがあります。
私もいざサポートブックを書こうとして…
怒りん坊ということ以外思い浮かばない…
という状態になってしまいました(笑)
なので、いろんな目線からの子どもの様子を知るために、サポートブックを作る時には園や学校の先生の意見を取り入れることが望ましいです。
家と外での子どもの様子の違いというのに気づかされます。
そこを踏まえて、サポートブックにこれだけは書いておきたいという内容を8つまとめてみましたので、以下にご紹介していきます。
※1ページにまとめたい内容ごとに書いています。
1.表紙
これは当たり前っちゃ当たり前なのですが、サポートブックは表紙が必要です。
ただ、ここにも載せるべき必要な情報はありまして…
■子どもの氏名
■愛称(日頃よく使う呼び名)
■顔写真
■生年月日
は記載しておいた方がよいでしょう。
生年月日は、学年混合になる支援学級や放課後等デイサービスなどで最初は必要になる情報だと思います。
ただ、個人情報の観点から外したいという保護者の意向があれば削除してよい項目かもしれません。
これら以外にも、場合によっては学校名などを記載してもよいかと思います。
2.診断名・特徴
自閉症スペクトラムなど診断名がついている場合は、それも書いておきます。
手帳の有無(程度)もそこに一緒に書いておくと良いかもしれません。
あとは、その子の特徴となる部分(性格や普段の行動など)をまとめておきましょう。
後で「コミュニケーション」「こだわり・パニック」などの項目で対処法や詳細は書くので、ここの特徴についてはざっくりで良いと思います。
■診断名
自閉症スペクトラム(ADHD疑い)
■手帳の有無
・療育手帳 有り(B2)
・身体手帳 無し
■本人の特徴
・会話が一方的になりがちです
・人が多い場所・大きな音が苦手です
・自分の気持ちや考えを言葉で相手に伝えることが苦手です
・順番を待つことが苦手です
・思い通りにいかない時・失敗した時にパニックになります
・予定外の出来事に対応するのが苦手です …など
ここで書きたいのは、子どもの困り感が出やすい部分です。
子どもと接する人に子どものどのような部分を気にかけておいてもらいたいか、そこを中心にまとめるとよいかと思います。
3.好きな遊び・苦手な遊び
これは小学生向けの内容になるかと思いますが、子どもの遊びの方向性を知ることはその子の成長具合を知る手立てにもなります。
どのような場所で遊ぶのを好むのか、集団遊びかひとり遊びか、また苦手な遊びも書いておくと子どもの不安感を減らすことができます。
パニックになった時の対処法も合わせて書いておくとベストです。
■室内遊び
・積み木やプラレール、トランポリンで遊ぶのが好きです
・ひとり遊びを好みます
■屋外遊び
・ブランコ・滑り台で遊ぶのが好きです
■好きな遊び
・ままごと・お医者さんごっこ
■苦手な遊び
・おにごっこ・かくれんぼ
・集団遊びが苦手です
■配慮してもらいたい点
・勝ち負けにこだわりすぎて上手く遊べなくなります
・癇癪を起こした時は場所を変えてクールダウンさせてください
4.食事について
小学校などは、基本苦手な食べ物もなるべく給食では食べるように指導されますが、発達障害のある子どもは味覚の過敏さを持ったケースも多々あります。
そのような子どもに配慮してもらうために、サポートブックでは食事面での情報も書いておきましょう。
食事形態(ひとりで食べられるか、箸は使えるか…など)やアレルギーもあれば一緒に書いておくと安心です。
・カレー・肉料理
■嫌いな食べ物
・野菜全般・柑橘類
■アレルギーの有無
・無し
■配慮してほしい点
・野菜は、みじん切りであれば食べることができます
・ほぼお箸は使えますが、ご飯物を食べるのは苦手です
5.トイレ事情
排泄については個人差が大きい部分なので、ここについてもサポートブックに詳細を書いておきます。
トイレのタイミングやひとりでどこまでできるか、排泄の意思表示の方法などを書いておきましょう。
・尿意がある時はモジモジし始めます
・ズボンに手を入れることが増えたら尿意のサインです
・小便器を使う時にズボンをすべて下ろす癖があります
・「おしりは隠します」など事前の声かけがあればおしりを出さずにできます
■大便時の特徴・配慮してほしい点
・おしりを自分で拭けません。トイレットペーパーを渡すと自分で拭こうとします
・オムツの中以外ですることを嫌います
トイレトレーニングの進み具合は子ども一人ひとりで違いますので、「○時間ごとにトイレに誘ってください」など必要なフォローを書いておくのも良いかと思います。
子どもにとって分かりやすい・馴染みのある声かけを例として書いておくと、支援者も対応しやすくなります。
6.衣服の着脱について
着替えについても排泄と同じく、どこまで子ども一人でできるのか個人差があります。
着脱の両面について、どの程度の補助が必要なのかを書いておきましょう。
・すべて本人ひとりでできます
・ボタンは最初の1ヶ所を補助してもらえるとその後はひとりでできます
・ジッパーの最初の部分が苦手です
・首まで通すのを手伝うとその後はひとりでできます
■脱ぐ
・袖を抜く時に補助をお願いします
・ズボンとパンツを一緒に脱ぐ癖があります
・脱いだ服を放り出したまま忘れることがあります
・声掛けをすると脱いだ服をたたむことができます
■配慮してほしい点
・服が濡れるとパニックになることがあります
・着替えるかタオルで拭くかを選ばせると落ち着きます
・服の前後ろが分からないので声掛けをお願いします
衣服の着脱時にでやすい困り感をまとめ、その対処法を書いておきます。
洋服へのこだわり(素材やデザインなど)がある場合も、ここに書いておくと良いでしょう。
7.コミュニケーション①
普段、子どもがどのような方法で周囲とコミュニケーションを取っているかをまとめます。
言葉での意思表示は可能か、何語程度で話せるか、または絵カード・文字カードを使ったやり取りが中心なのか…など、子ども本人の表出と理解の程度をなるべく詳しく書いておきます。
・2~3語文で話すことができます
・理由を説明するのが苦手です
・答え方が分からない時にオウム返しが出やすいです
・要求は絵カードを持ってきて行います
■理解
・短く端的に話すとほぼ理解できます
・パニック時は話言葉より文字で示した方が入りやすいです
・絵カードを使うと理解できます
■要求の方法
・「~したい」「~が好き」など言葉で伝えることができます
・初めての場所・慣れない人に対しては言葉で伝えるのが苦手です
・ほしい物の場所まで相手の手を引っ張っていきます
■不快な時の意思表示
・人が多い場所や騒々しい場所で泣いたり声を上げることがあります
・「したくない」など嫌なことは言葉で拒否できます
・不快なことが起こったらその場から逃走しようとします
■不安になりやすい場面・対処法
・急な予定変更や見通しの立たない場面では落ち着きがなくなります
(例)立ち歩く・手遊びが増える・次にやることをこまめに提示してください
・「○分までやります」など時間で示すと入りやすいです
・大声や感情的な言い方を怖がります
コミュニケーションは日常生活でもっとも個性が出やすい部分ですので、ここは具体例をあげるなどしながら、困り感の出やすい状況や対処法を詳細に書きましょう。
お友達との関わり方や、どのような行動をされるのが苦手なのか…など、現時点で思いつく限り書いておくと良いかと思います。
8.こだわりやパニックについて
発達障害の子は、その表現の仕方は個人差があるものの、多かれ少なかれパニックを起こします。
我が家の次男のパニックは「叫ぶ」「物を投げる」「地団駄を踏む」「物を蹴る・殴る」など書いていて頭痛がするような激しいものですが、なかには「その場で動けなくなる」「吐く」などのパニックを起こす子どももいます。
そんなパニックは、子どもが持っているこだわりが原因になっていることが多いものです。
なので、こだわりの種類やパニックになりやすい状況などもサポートブックに事細かく書いておきましょう。
・苦手な音(咳・くしゃみ・奇声)を聞いた時
・思い通りにいかなかった時
・見通しが立たない時
・手持ち無沙汰な時
■行動
・苦手な音を聞くと足を踏み鳴らして大声を出します
・思い通りにいかなかった時は、物を投げて叫びます
・見通しが立たない時は、「まだ?」「早く!」などと落ち着かなくなります
・手持ち無沙汰な時は、立ち歩いたり手遊びをしだしたりします
■対処法
・苦手な音→「場所を変える」「イヤーマフを進める」「共感を示す(音が嫌だったね)」
・思い通りにいかなかった時→「理由を聞いて共感をしめす(壊れたの嫌だったね)」「代替案を提示する」「クールダウンさせる(場所移動・抱っこ)」
・見通しが立たない時→「事前の細かい見通しの徹底(時計やスケジュール表)」「予定外の出来事はクールダウンで落ち着かせる(場所移動・抱っこ)」
・手持ち無沙汰な時→「興味のある課題(遊び)を与える」
パニックになる原因は、子どもによってさまざまな理由があると思います。
その原因をまとめておくことでパニックを減らすことにもつながりますし、支援者側も環境調整がしやすくなります。
また、一見パニックに見えない行動であっても、保護者がサポートブックに書いておくことで、支援者側からそのパニックを見過ごされる危険性も減らすことができます。
子どもにとってベストな対応をしてもらうためにも、この項目については保護者が気合を入れてまとめておきたい部分です。
サポートブックの作り方のポイント
主にサポートブックに書いておきたいことは上記の7項目になるのですが、子どもによっては別途病名(てんかん発作など)や服薬状況などを記載します。
ここは保護者の判断で、共有したい情報として必要なもの・不要なものを選んでいけばよいかと思います。
ここまで読んでいただいた方の中には「こんなにたくさんまとめるの、大変そう…」と思われるかたもいらっしゃるかもしれません。
ですが、サポートブックを作る上で意識しておきたいポイントは…
■具体的に書く
■短い文章で簡潔にまとめる
■できないことばかりでなく、できることも盛り込む
この3つです。
例えばこだわりについても、ただ「こだわりが強い子です」と書くだけでは内容が漠然とし過ぎていて相手に伝わりにくくなります。
こだわりもどういった部分で強くでるのか、順番なのか、物の配置なのか、身に付ける物なのか…お子さんによって違いがあると思います。
その一見わかりにくい特性について、サポートブックを読んだ相手が理解しやすいように書いておくことが大切です。
内容をわかりやすくするためには、短い文章で端的にまとめることも必要。
日頃のブログ記事では長文を多発している私がこんなこと言うのもアレなんですが(笑)、私も文章の形式についてはサポートブックを作る上でとても意識しています。
「聴覚過敏」「視覚優位」などのやや難しい印象の言葉はなるべく使わず、「大きな音が苦手です」「目で見て覚えるのが得意です」などという書き方をするようにもしています。
そして、サポートブックの表現はなるべく肯定的にするのもポイントです。
子どもの特性をまとめていると、ついついできないことのオンパレードになりがちですが、そのできないこともどういう配慮があれば軽減するのか・できるようになるのかを書くのが大切。
「トイレでおしりを拭くのが苦手ですが、大人がトイレットペーパーを切ってやると自分で拭きます」
というような「苦手感」と「対処法」を合わせて書くことで、支援者も対応がしやすくなります。
発達障害のある子は、その特性からできないことが多いように思われがちですが、適切な配慮があればできることもたくさんある子たちばかりだと私は思っています。
そして、何より個性的で突出した能力をもっている子も多数いるのが発達障害児。
そんな子ども達のすばらしい才能が、周囲の理解を得られないばかりに埋もれてしまうのは非常にもったいないことです。
「自分にもできる」という自信をすべての子に持ってもらいたい。
子どもの可能性を伸ばすためにも、そして発達障害児とその家族がおかしな偏見や誤解で悩まないようにするためにも、サポートブックという存在がひろく認知されるようになれば…と感じています。
ということで、保護者のみなさま。サポートブック作り、がんばりましょうね♪
福岡市在住。年の差3兄弟を育てています。
次男が知的境界域の自閉症スペクトラム(ASD)です。
発達障害のこと、子育てのこと、趣味のビュッフェ巡りや旅行について書いています。
社会福祉士です。
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