自閉症スペクトラムと診断されている我が家の次男。
こだわりと癇癪(かんしゃく)が非常に強いという特性があります。
こだわりにかんしては、年齢が上がるにつれ緩和してきている部分もあるのですが、今でも対応に苦労しているのが癇癪の強さです。
癇癪も頻度こそ減ってはきていますが(言葉による理解・妥協できることが次男なりに増えてきているからだと思われる)、1回あたりの爆発力というのはいまだ凄まじいものがあります。
癇癪も次男の中で限界を超えるとパニック状態になり、それが外出先で起こると半径30m以内の人がすべて振り返るくらいの激しさです。
図で表すと…
不機嫌(グズグズ)<癇癪<パニック
という感じです。
泣く・喚く(わめく)・暴れる…などなど。
最近は言葉も話せるようになってきたので「全部ぶっ壊してやるー!!」「ぶん殴ってやるー!!」などの暴言も出てくるようになってきました(実際にはしない)
先日は、とある施設で爆発した次男が「このお家ぶっ壊してやる!」と暴れだし、しまいには「地球壊す!!」とスケールのでかいパニックを起こしたことも…(疲)
このように、いったんパニックを起こすと破壊神と化してしまう次男ですが、彼との生活も5年を過ぎ、それなりにパニック時の対処法というのを身につけてきました。
療育などでは「パニックは起こる前に防ぎましょう」などと言われましたが、そうは言ってもすべてのパニックを回避することはできません。
なので、パニックが起こってしまった時にそれをどう悪化させないかという対応が大切になってきます。
そこで、今日は我が家がよくやっている「子どもがパニックを起こした時の対処法」についてご紹介しようと思います。
パニックはなぜ起こるのか
私が思うに、パニックの原因には「こだわり・不安・嫌悪感」の3つがあるように感じています。
発達障害児はなにかと過敏な子が多いので、さまざまな要因による不快感がパニックを引き起こしていると考えています。
こだわり
こだわりが強い子というのは、物事の流れまたはその物自体に執着します。
■同じ洋服ばかりを着たがる
■急な予定変更を嫌う
■物の定位置が決まっている
など、自分の中で「これはこうだ!」というこだわりを持っているため、それが崩れてしまうとパニックを起こすことがあります。
しかも、発達障害児のこだわりというのは本当に細かいものが多く、また彼らは非常に観察力もあるため、ちょっとした違いに気がつきやすいです。
次男の場合、ブロックを床に並べて遊んでいても、そのどれか一つが少しでも動いていたらすぐに気がつきます。
お気に入りの物を収集する癖もあり、それらを一見乱雑に置いているようで、私がこっそり片付けていたりすると「違うー!」と怒り出すことも。
このようなこだわりから、思い通りにいかないケースに遭遇した時にパニックは起こりやすいと感じています。
不安
発達障害児が強いこだわりを持っているというのも、不安な気持ちの裏返しではないかと感じます。
いつもと同じ物・同じ場所にこだわることで、安心感を得ているのではないかと。
大人でもそうかもしれませんが、初対面の人に会う時や初めての場所に行く時などは期待もありつつドキドキもするものですよね。
それは、「そこでどんなことが起こるのだろう」という見通しに立たなさに原因があるわけで、発達障害児の場合は特にその部分に不安を覚えるのだと思います。
我が家の次男もそうですが、とっても怖がりです。
「あ~怖い~」とよく言っていますが、知らないもの・経験したことのないもの、そして視覚優位のため目に見えないもの(これは人とのコミュニケーションなどの対人面)に対して人一倍以上に恐怖心を持っているようです。
そんな不安な気持ちをこじらせてしまうことでパニックが引き起こされることもあるように思います。
嫌悪感
こだわりや不安が強い発達障害児の場合、苦手なものも結構多かったりします。
次男の場合は聴覚過敏もあるのですが、基本大きな音が苦手です。
人の咳払いやくしゃみで「うわ~!」とパニックになることが多いです(なぜか家族のは平気)
中学1年生になった次男ですが、支援学校から支援学級(知的)に転校してから聴覚過敏はほぼ消失しました。専門医から「次男くんの聴覚過敏は後天的なものなので環境が変われば治まりますよ」と言われていましたが、本当にその通りになりました。
また、虫も苦手なので、ハエが飛んでいただけでも大騒ぎになります。
このように、さまざまな物事に対する嫌悪感が募ってしまった結果パニックが起きてしまうことも多いように感じています。
では、実際にパニックが起こった時にどのように対処すればよいのか。
以下に我が家での取り組みをいくつかあげてみたいと思います。
場所を変える
パニックが起こった時に、我が家がまずやっているのが「場所を変える」ことです。
家であれば、別の部屋に移動する。
外出時であれば、建物の外に出たり、車の中に移動したりします。
パニックの原因というのは、その場ですぐ察しがつく場合もあれば、なぜパニックになっているのかなかなか分からない場合も多いです。
そんなどちらの場合でも、場所を変えることでその時の空気をいったんリセットすると、パニックが落ち着きやすくなります。
家では一時期やっていた方法ですが、部屋を締め切って明かりを落とし、そこに布団を敷いて次男とふたりで布団をかぶって寝てパニックをやり過ごしていたこともありました。
次男の場合、狭い空間というのが落ち着くようなので、これも慣れてきたら自分で部屋を締め切って布団で寝て、また落ち着いたら出てくるというのを一人でやっていました。
外出時の場合は、我が家は車移動が多いので、パニックになった時は私と次男で車に避難していることが多いです。
狭くて静かな空間ですし、公共の場でパニックを起こして暴れると周りに迷惑をかけますが、車の中ならどんなに騒いでも聞いているのは私しかいないので(笑)
ある程度気持ちを発散させないとパニックも落ち着けない場合が多々あるように思います。
抱っこで揺らす(感覚刺激)
これは療育園のOT(作業療法士)から教えてもらった方法ですが、心地よい揺れを感じることで脳の興奮が抑えられるのだそうです。
実際に教えてもらった方法は…
①バスタオルを敷いて子どもを乗せる
②バスタオルの両はしを大人二人で持つ
③ゆっくりバスタオルを持ち上げ、横に揺らす
という感覚遊びだったのですが、パニックを起こしている時にこれを取り入れるのはなかなか難易度が高いです。
なので、私なりに改良して、パニックを起こした時は抱っこで揺らすという方法をとるようにしたところ、若干落ち着くのがはやくなったように感じています。
暴れてのけぞって抱っこも難しい状況もあるにはあるのですが、それでも抱っこしてゆらゆら揺らしながらその辺を歩き回るだけでも効果はあります。
抱っこは、縦抱っこでOKです。
次男もそうですが、激しいタイプの発達障害児の場合は、感覚の許容量が多く、より強い刺激を求めるタイプが多いようなので、抱っこの時もちょっとキツめに抱きしめて揺らしてあげると良さそうです。
気持ちを受け止める
パニックというのは、子どもの中になんらかの負の感情が増えすぎてしまった時に起こります。
なので、その時の子どもの気持ちを親が受け止めてあげると落ち着きも早くなるように実感しています。
パニック時というのは、周囲の声かけなどが子どもには届きにくいので、まずは上記のような場所移動や抱っこなどでクールダウンさせることが優先です。
ですが、ある程度落ち着いてきた段階で、子どもが不快に思っていた感情を代弁してやるとさらに気持ちが安定しやすくなります。
言葉が出ている子であれば、原因を聞ける範囲で聞いてみて「嫌だったね」「悔しかったね」などと言葉で表現してあげる。(癇癪中はなかなか難しいです)
言いたくなさそうな時は無理に聞き出さない方が無難です。無理強いはパニックを引きずる原因になります。
また、話せない子であっても、親が状況から気持ちを察して言葉をかけてやることはできます。
子どもがパニックを起こしている時というのは、子ども自身が自分の気持ちのやり場に困っている状況ですので、大人がそれを代弁してあげることで子ども自身が自分の気持ちを客観視できるきっかけになります。
我が家はこの方法をずっとやっていますが、次第に次男から「これがイヤだったの~」と癇癪を起こす前に言うことも増えてきて、その効果を実感しているところです。
受容はしても許容はしない
子どもの気持ちを受け止めることは大切ですが、すべての行動を許してしまうのはいけません。
私はこれを「受容」と「許容」の違いと認識しています。
受容とは、先に述べたように子どもの気持ちを受け止めること。
嫌な気持ち、どう感じたかを子どもの思うままに受け入れてあげることです。
が、許容は子どもの行為全てを許してしまうことです。
パニックを起こす時というのは、その原因が必ずしも許せるものばかりではありません。
■おもちゃの取り合いでお友達を叩いてしまった
■お店のお菓子が欲しくて勝手に食べてしまった
そこに子どもなりの思いはあるのだけど、世間一般的にやってはならない事に対しては、それが発達障害児相手だろうと毅然としてダメなことは教えないといけないと思っています。
私の判断基準としては、人に迷惑をかけるかどうかというのが受容と許容のラインです。
おもちゃを使いたかった気持ちは受容してあげても、その後にお友達に手を出したことまでは許容できないという感じ。
「おもちゃで遊びたかったよね」「でもお友達は叩きません」など、くどくど言わずに端的に伝えるのがポイントかと思います。
代替案を出す
おもちゃのやり取りのように、自分の思いがあってそれを叶えられないことによるパニックの場合は、代替案を出してあげるのも有効です。
次男のようにこだわりが強い子の場合は、最初はなかなか代替案を受け入れられないかもしれませんが、これも繰り返しやっていく中で徐々に変化はでてきます。
先日あったことですが、うずまきキャンディーを買いたいという次男とともにスーパーに行ったところ、お目当てのキャンディーがありませんでした。
キャンディー、ない~!
と不機嫌になってきた次男に…
これはパニックきたな…
と内心ヒヤヒヤしていた私。
とりあえず気の済むまで店内を探してまわり…
ここにはキャンディーないみたい
キャンディーは今度別のお店に探しに行こう
今日はここにあるお菓子を買おう
と提案してみたところ、最初は「え~!」「いやだ~!」と言っていた次男も、最終的にはうずまきキャンディーに似たようなお菓子を買って満足していました。
ちょっと前の次男だったら完全にパニック起こして大暴れの事案ですが、こうやって次男が代替案を受け入れられたことは非常に嬉しかったです。
もちろん、別のお店に行って見つかるまでうずまきキャンディーを探してまわるという手段もとれたのですが…
■想定外の事態を受け入れる
■ちょっとの我慢を覚える
■代替案を受け入れる
という経験を次男にしてもらいたかったので、あえてこんな意地悪なやり取りをしてみました。
毎回このようにうまくいくわけではないのですが、こういう経験を少しずつ増やしていって、次男の中で許せる範囲がちょっとずつ広がっていくと良いかなと思っています。
まとめ
ということで、我が家なりのパニック時の対処法としては…
■気分を落ち着かせる事を最優先
■気分を変える・そらす
という順序で取り組んでおります。
日頃から本人の苦手・好きなどを把握しておくとパニック時にも対応しやすいです。
また、気持ちを落ち着かせるためには、大人からの言葉かけというのも大切。
その時は、大人は感情的にならずに至って冷静に対応するのが大事です。
これがなかなか難しくて、子どもが暴れたくっているとこちらも「キー!」と感情が高ぶりやすいものなのですが、私もようやく気持ちをフラットにして接することができるようになってきました。気分は仙人です。
こちらまで感情的になってしまうと、子どものパニックもさらにひどくなるものなので、これはほんとに大事なポイントです。
そして、いかに子どもの気分を変えられるか。
私は、次男がパニックに陥った時にいつも全力でこのことを考えています。
今はそうやって大人が気持ちの切り替えを手助けしてあげているけれど、ゆくゆくは次男自身でそれができるようになるのが目標。
そのためには、気持ちの切り替えのモデルケースを今は次男にいろいろと提示している時期なのだと思っています。
時間はまだまだかかると思いますが、将来的には「あの頃は、そういえばよく暴れていたよね~」と家族で言い合えるようになれるといいかな、と。
パニックでお悩みのみなさん、毎日一歩一歩がんばっていきましょうね。
福岡市在住。年の差3兄弟を育てています。
次男が知的境界域の自閉症スペクトラム(ASD)です。
発達障害のこと、子育てのこと、趣味のビュッフェ巡りや旅行について書いています。
社会福祉士です。
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