我が家の次男は現在4歳。年中から福岡市内にある療育園の単独通園に通っています。
自閉症スペクトラムの診断名がついており、言葉の遅れや癇癪・こだわりの強さが特徴としてみられます。
療育園では本当にいろいろな催しが企画されていて、発達障害に関する勉強会も頻繁に開催され、まだまだ知識の浅い私にとってはとてもありがたい存在です。
先日はOT(作業療法士)による学習会があり、感覚統合について学ぶ機会がありました。
「感覚統合」聞きなれない言葉かもしれませんが、私もこの勉強会に参加するまで、正直その意味をしっかり理解していませんでした。
そして、感覚統合は私たちの日常生活に非常に密接な関係にあること、またそれが発達障害を抱える児童の成長に大いにプラスになることなどを勉強させてもらいました。
そこで、学習会の備忘録を兼ねて、感覚統合の訓練にもなる日常生活の送り方や遊び方について5つピックアップしてみました。
どれも特殊な道具などを用意する必要なくすぐに始められるものばかりですので、ご参考にしてみてください。
感覚統合とは何か
感覚統合とは外部からの刺激を脳で適切に処理する事です。
字を書いたり、人の話を聞いたり、友達と遊んだりするときには、いろいろな感覚情報を脳が無意識に処理しています。感覚には、固有感覚(身体の動きや手足 の状態の感覚)、前庭感覚(身体の傾きやスピードの感覚)、触覚、視覚、聴覚などがあります。これらの感覚を、整理したり統合(まとめること)したりする 脳の働きを感覚統合といいます。
出典:奈良教育大学 特別支援教育研究センターHP より
感覚には五感(視覚・聴覚・味覚・臭覚・触覚)があることはご存知の方も多いかと思います。
ですが、私たちが無意識に感じている五感以外の感覚には…
■前庭覚…バランス感覚や空間内を移動する時に変化を感じて脳に情報を送る感覚
例)「身体の傾き」「回転」など
■固有覚…手足にある関節や筋肉から動きのたびに脳に情報を送る感覚
例)「トランポリンを跳ぶ」「砂だんごを作る」「壁を押す」など
この2つも存在しています。
発達障害を抱える子供はこれらの感覚に敏感過ぎたり、逆に鈍感過ぎたりする故に、日常生活において困難さを感じることが多いのです。
例えば、前庭覚の感覚が入りにくいタイプの場合は、長時間回転していても目が回らなかったり、身体がふにゃふにゃして椅子からずり落ちてしまったりする場合があります。
逆に、ブランコなどの揺れる遊具を怖がったり、身体の姿勢の変化に恐怖感を覚えるような子供は、この前庭覚が入り易すぎるタイプです。
固有覚の感覚が入りにくい子は、主に力加減が分からないタイプが多いです。
おもちゃの扱いが雑だったり、人に対しても動きが乱暴な傾向があります。
逆に、ぶら下がる遊びを好んだり、人からぎゅっと強く抱きしめられたりするのを好む子の場合は、固有覚を求めている傾向にあると言われています。
発達障害の特徴としてよくあげられる、「人ごみやモールなどで落ち着かなくなる(視覚優位)」「ざわざわした環境で耳をふさぐ(聴覚過敏)」「食べ物の好き嫌いが多く、少しの苦手食材でも気づいてしまう(味覚過敏)」なども、この感覚統合の問題だといえます。
これら全てにおいて言えることは、感覚の受け取り方や調整能力・処理過程に問題があるということです。
一見、どれも個人の性格や躾の問題として指摘されてしまいそうな事柄ばかりですが、そうではなく、脳の神経回路の伝達の問題なのです。
それゆえ、このような特徴が子供に見られた時は、早期に感覚統合の訓練をすることで、症状の軽減が望めると同時に、子供の将来的な2次被害(劣等感による引きこもりなど)を防ぐ事ができます。
日常で取り入れられる感覚統合の訓練5つ
このような感覚の困難さは、日常生活の訓練で改善が可能です。
訓練と言っても大それたものではなく、今回の学習会で教えていただいたものは、普段の日常生活で何気なくしていることだったり、遊びとして取り入れやすいものばかりでした。
それらの中で5つ効果的なものをご紹介します。
1.生活編ー立ったまま歯磨きをする
歯磨きというのは、道具を手に持って動かしながら、歯ブラシの刺激が歯に伝わるという、さまざまな感覚を刺激する動作です。
小さいお子さんだと、自分で歯ブラシを持って磨く事自体も結構難しかったりしますよね。
歯ブラシを子供が自分で使えるようになったら、今度はそれを立って行わせることで、足からの刺激も同時に受けることができ、これだけでも感覚統合の訓練になるようです。
「こんなことで!?」と、このお話を聞いた時は以外でしたが、確かに自分で歯磨きができるようになった長男の様子を見ていても、歯磨きはいつも座ってしています。
私たち大人は普段何気なくやっていた「立って歯を磨く」という行為は、実は意外といろんな感覚を総動員して行っている行為なのだと目からウロコでした。
歩きながらの子供の歯磨きは危険も伴うので、保護者の方は歯磨き最中はしっかり見守っていてあげてください。
2.食事編ー片手でお箸、もう片手でお茶碗を持って食べる
これも大人であれば普通にできている方が大半ではないでしょうか。
子供の頃「お茶碗を持って食べなさい!」と親に食事中怒られたという思い出がある方も多いのでは?
この、片手でお箸を持ち、もう片手でお茶碗を持って食事をするという行為は、実は意外と難しいものなのです。
左右の手で別々の事をするというのは、手からの刺激がしっかり脳に届かないとスムーズにはできません。
我が家の次男もお箸はまだまだエジソン箸ですが(やる気になったりならなかったりで結局いまだエジソンばかり…)、お茶碗に左手を添えて食べるということが難しいようです。しょっちゅう左手はお膝の上で固まっています(笑)
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そもそも感覚統合に問題がある発達障害児の場合は、普通のお箸を習得する事自体が一苦労なのですが、そこに茶碗を持って食べるというのは相当ハードルが高いと思います。
次男の食事中の左手放置については療育園でも次男の個別課題として担任が取り上げてくれているので、私もこれにかんしては焦らず次男のペースで取り組んでいきたいと考えています。
3.遊び編ー手押し車
手押し車という遊びをご存知でしょうか。
二人組で行うのですが、一人がもう一人の脚を持ち、脚を持たれた方は手だけで歩いて移動する遊びのことです。
(出典:運動指導の進め方2HP より)
これ、私が小学生の時に体育の授業でやった覚えがあるのですが、このほんわかした絵以上にハードな運動です。
手は進む動きで、脚は誰かに持たれているというさまざまな感覚が入ることで感覚統合の良い訓練になるのですが、そもそも腕の筋力とか腹筋とかの基礎体力が結構必要です。
筋持久力もつくということなので、我が家の次男のように低緊張なお子さんは最初はなかなかできなくても、遊びの一環として取り入れると効果的な気がします。
4.遊び編ーふうせんバレー
これはお子さんとご自宅で遊んでいるという方も多いのではないでしょうか。
我が家の子供たちも大好きなのですが、ボールを風船に変えてバレーのように落とさないように打ち合う遊びです。
ボールだと重さがあったり、スピードが出たりして難易度が高くなってしまいますが、風船であれば手軽に室内でもできます。
風船を相手めがけて打って、また打ち返された風船を打ち返すというシンプルな動きながら、目で風船や相手の位置を正確に捉える必要があり、手への刺激も入るので、感覚統合の訓練におすすめの遊びになります。
我が家は最近はビーチボールでやることが多いです。
風船よりもスピードが出る上に、当たってもそれほど痛くないので。
子供の成長に応じて、風船からいろいろ変えていっても面白いかと思います。
5.遊び編ーボールを脚に挟んでジャンプ
これも意外と難しい遊びではないかと思うのですが、効果は抜群だそうです。
脚の膝辺りにボールを挟んでそのままその場ジャンプをするだけなのですが、ボールを落とさないようにするのは大人でも結構至難の業…。(私だけでしょうか)
身体にぐぅっと力を入れる動きは固有覚に作用しますし、ボールを挟むという動作とジャンプをするという動作を同時にするというのは複雑な神経伝達になるので、とても良い訓練になるようです。
私もこれをやってみて感じたのですが、膝にぐっと力を入れるからか、太ももの内側の筋肉に結構ききますね。
ジャンプがまだ難しいお子さんには、トランポリンでその感覚をつかむのもおすすめです。
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感覚統合には楽しく遊ぶ事が大切
以上、感覚統合の訓練として普段から取り入れやすいものを5つご紹介してきましたが、これら以外にも本人が「楽しい!」と思えるような動きをさせるのが大切なようです。
そして、同時に異なる動きをするということが、脳への刺激として重要な点だそうです。
いくら効果があるものだといっても、本人に全くやる気がないようではやらせる意味はありません。
最初はできなかったことでも、本人がやりたがれば親も一緒に取り組んであげて、できた時の達成感を積み重ねるのも大切だそうです。
そういう喜びの積み重ねは、子供自身の次へのチャレンジ精神として培われていきます。
この点が感覚統合機能を促進していく最も有効な点なのだそうです。
ただ、「どんな遊びや取り組みをして良いか分からない」という方は、脳に感覚が入りやすい動作を挙げておきますので、参考にされてみてください。
■単純で分かりやすい動きをさせる(ブランコをこぐ・トランポリンを跳ぶ・滑り台を滑り上がるなど)
※滑り台の使い方にかんしては、以前私も公園遊びの記事でも書きましたが、やるタイミングというのは大切なので、その点はご注意願います。
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■高さを感じる遊びをする(ジャングルジムにのぼる・高いところからジャンプするなど)
■スピードに強弱のある揺れや回転を取り入れる(ブランコなど、激しく揺らしている時に突然止めてみるなど)
■身体にぐっと力が入るような動き(押す・引く・飛び降りる・もぐらたたきなど)
スピード感がある動きは脳に入りやすいそうなので、お子さんが嫌いでなければそのような動きのできる遊具などで遊ばせるのが良いかと思います。
ブランコとかシーソーとかも良さそうですね。
我が家の次男は低緊張と診断され、なかなかその場ジャンプや「跳ぶ」といった動きが苦手だったのですが、今では部屋の押し入れによじ登り、予め自分で敷いておいた布団やマットの上にジャンプして飛び降りるのがお気に入りになっています。
療育園を見学した時にもこの飛び降りるという遊びをよくさせてくれているのを見かけていたので、どうやらその影響のようです。
また、よじ登った押し入れの上にある鴨居に手をかけてぶら下がっていることも…。
(落ちたらどうしようとハラハラするのですが、これまで落ちた経験なし)
感覚統合の話を聞くまでは「危ないよ~」とかついつい言ってしまっていた私ですが、今ではある程度は大目に見るようにしています。
おそらく私が思うに、今の次男にとっては「こんなことしたらどうなるかな」という興味や関心もたくさん出てきている時期のようなので、相当危ないことでない限りは本人のしたいようにさせています。
実際、走るのも早くなったり、握力も強くなったりと彼の筋力UPも感じています。
おかげで我が家荒れ放題(笑)
子供にとって遊びは最大の学びの場と言いますが、感覚統合の観点からみてもこれは真実だなと感じています。
身体で覚える感覚というのを大切にしていきたいと思ったOT学習会でした。
福岡市在住。年の差3兄弟を育てています。
次男が知的境界域の自閉症スペクトラム(ASD)です。
発達障害のこと、子育てのこと、趣味のビュッフェ巡りや旅行について書いています。
社会福祉士です。
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